義務がない不動産の調査
不動産の取引を行う際、仲介する不動産業者は必ず物件の調査を行いますが、実は宅建業法には明確な調査義務が規定されていません。説明義務はありますが、調査義務はないのです。しかし、説明を行う以上、プロとしての責任から調査することが当然とされています。
誰でもわかることは調査しなければならない
調査義務に関する明確な規定がないため、どの範囲まで調査すべきかは自分たちで基準を設ける必要があります。
全くの白紙から基準をつくるのは困難ですが、裁判所の判例を参考にし、「宅建業者としての責任を果たしたか」「後日問題とならないか」という視点から調査基準をつくります。
以下のように判断されます。
- 誰でも見たり聞いたりすればわかることは調査し説明する必要がある。
- 高い専門性が必要なことまで調査する義務はないが、注意を促すことは必要である。
専門家に任すことを決めておく
「高い専門性が必要なことまで調査する必要はない」とは、地盤調査や耐震診断など専門知識や機材が必要なものを指します。
これらについては無視できませんが、依頼者に「注意が必要」と告げる必要があります。その上で、専門調査を専門家に依頼するように伝えます。
不動産業者が全てを知っていると思われるため、必要に応じて専門家への相談を勧めることが大切です。
不利益に当たるのかどうかを見極める
依頼者の目的によって、不利益になることとならないことがあります。
例えば、古家を解体して新築を建てる場合、古家の状態は問題になりませんが、そのまま住む場合は建物の現況が重要です。
このように依頼者の目的に応じて調査範囲が変わります。
最善を尽くしたのかを自問自答する調べられる範囲内で調査を行えば責任は生じないことが重要です。
不動産には所有者しか知りえない情報が多く、所有者が話してくれなければ調査にも限界があります。
この場合、所有者から得た情報と調査結果を依頼者に正直に伝えることが責任を果たすポイントです。
常に「最善を尽くしたか」を自問自答することが大切です。
調査の定義付けが大事
不動産の調査とは、不動産がどのようなものであるかを誰にでもわかりやすくすることです。
権利関係や法律関係などを調べて初めて本当の姿が理解できます。
依頼者は不動産業者に対して「目に見えないもの」「気づかないもの」「見てもわからないもの」を明らかにして、不利益を被らないように求めています。
この3点を念頭に置き、各自で不動産の調査を定義し、調査範囲を決めていきましょう。
ポイント
不動産の調査とは、不動産を誰にでもわかりやすいものにすること。その仕事がとても大事です!