条例により義務づけられる緑化率についての不利益事実の不告知
視点
新築戸建て住宅の売買で、条例に定められる緑化率を満たしていないとき、売買契約を取り消せるか?
要点
売主が風致地区条例による緑化率が最低基準を下回っていることを知りながら告知せず、買主が条例違反はないと誤信して新築戸建て住宅の売買契約を締結した事案において、買主は、消費者契約法4条2項によって売買契約を取り消すことができるとされた。
事案の概要
購入の経緯
買主Xは、売主Yから平成27年1月25日に名古屋市所在の新築戸建て住宅を9,778万9,100円で購入。
本物件は第1種風致地区内に位置しており、Yはデッキテラスやその眺望をセールスポイントとしていた。
条例違反の発覚
名古屋市では第1種風致地区内の住宅は緑化率30%以上が必要であったが、Yは緑化計画図に基づき緑化率30%以上で許可を得た。
しかし、その後芝生を撤去してデッキテラスを設置したため、緑化率が30%未満となり条例違反となった。
裁判の経過と結果
Xは物件引渡し後に条例違反を知り、消費者契約法4条2項に基づいて売買契約を取り消し、代金返還を求め訴訟を提起。
原審の名古屋地裁はYの故意を認めず取消しを認めなかったが、控訴審の名古屋高裁はこれを覆し、Xの取消しを認めた。
最高裁でも上告は棄却され判決が確定した。
裁判所の判断
故意の認定
判決では、Yが当初から一旦芝生を貼り、行為完了後に撤去してデッキテラスを設置する意図があったと強く疑わせる事実が認められ、条例違反の事実を消費者Xに故意に告げなかったとされた。
取消しの根拠
Yが消費者に対して重要事項について利益となる旨を告げ、条例違反という不利益事実を告げなかったことにより、消費者契約法4条2項に基づいてXが売買契約を取り消すことができると判断された。
解説
消費者契約の取消し
消費者契約法では、事業者が重要事項に関連する消費者の不利益となる事実を故意または重大な過失によって告げなかった場合、消費者は契約を取り消すことができると定められています。
消費者契約法の改正
平成30年の改正により、事業者に故意がある場合だけでなく、重大な過失がある場合も取消しが認められるようになり、消費者が不利益事実の不告知による取消しを行いやすくなっています。