投資用アパートの売主の窓先空地の説明義務
視点: 窓先空地を駐車場として使用できるかどうかは、売主が説明すべき事項?
要点:投資用アパートを、空き地から駐車場収入を得られると広告をして販売したが、条例によって空地を駐車場として使用することができなかった事案において、売主と仲介業者の説明義務違反が認められた。
事案の概要
- 買主Xと売主Yは、平成27年12月28日、宅建業者Zの仲介により、建物(本件建物)とその敷地(本件土地)について、代金5680万円で売買契約を締結した。
- Yは建設会社であり、本件建物はYが設計し建築した投資用アパートである。
- Yは本件土地建物を販売する際、販売広告(Y販売広告)を作成し配布していた。
- Y販売広告には、車を2台駐車している記載がある平面図(本件平面図)が掲載され、ワンルーム4室の想定賃料や駐車場収入が記載されていた。
- 仲介業者Zは、Y販売広告を基に「希少駐車場2台分付・バイク置き場4台分付き」と記載した販売広告(Z販売広告)を作成し、Xに対しメールで物件を紹介した。
- 東京都建築安全条例により、共同住宅の窓先空地には物を置くことができず、駐車場として使用することはできないと定められている。
- Xは物件購入後、駐車場として使用しようとしたが、窓先空地として認定されているため、駐車場としての使用が禁止されていることが判明した。
- XはYが虚偽の広告を作成しZに提供したこと、及びZが仲介業者として十分な調査を行わなかったことから、YおよびZに対し損害賠償を求めて訴えを提起した。
- 裁判所は、YおよびZに対し損害賠償義務があるとして、Xの請求を認めた。
裁判所の判断
判決では、本件建物が収益物件として売買の目的であったため、駐車場としての使用が法令上許されないことを説明すべきであったとし、YおよびZの説明義務違反を認めた。
解説
説明義務:
不動産売買において、売主は購入者に対して、契約締結の判断に重大な影響を及ぼす事項について説明する義務がある。特に宅地建物取引業法(宅建業法)上、重要事項を説明する義務が課されているが、宅建業法に記載されていない事項であっても、取引に重大な影響を与える場合には説明が必要である。
本件の検討:
本件では、空き地から駐車場収入が得られるとの広告表示がなされていたが、実際には条例によって空き地を駐車場として使用できなかった。このような条例による制限は、宅建業法に明記される重要事項ではないが、投資用アパートの売買においては取引の判断に影響を与える事項とされる。
そのため、売主および仲介業者には説明義務があると判断された。