連帯保証人(個人)が無効にならないようにするためには
2017年6月2日に公布され、2020年4月1日から施行された民法改正は、賃貸契約においても重要な影響を及ぼしています。
特に、事業用建物賃貸借契約における連帯保証人制度については、新法の規定に基づいた対応が求められます。
本記事では、連帯保証人に関する新法のポイントと実務上の注意点についてご紹介します。
1. 極度額の設定が必要に
旧法では連帯保証人の責任には上限がなく、保証債務が無制限に及ぶ可能性がありました。
しかし、新法では個人が連帯保証人となる場合、極度額を設定しなければ保証契約そのものが無効となります(民法465条の2)。
これは賃貸借契約においても適用され、極度額の記載がない場合、保証契約が成立しません。
一般的には、賃料や管理費の24ヶ月分が極度額として定められることが多いです。
たとえば、賃料が月額20万円(税別)、管理費が月額5万円(税別)の場合、極度額は660万円(賃料22万円+管理費5.5万円×24ヶ月)となります。
保証契約を結ぶ際には、賃貸人と賃借人の双方が極度額の設定を明確にすることが重要です。
2. 財産状況の開示義務
新法では、賃借人が保証人になろうとする者に対し、自身の財産状況を開示する義務が課されています(民法465条の10)。
借主がこの義務を怠ると、保証契約は取り消される可能性があります。
これにより、保証人は自身の負担を正確に把握し、リスクを認識した上で契約を締結することが求められています。
3. 旧法での契約更新の影響
旧法下で締結された事業用建物賃貸借契約も、契約が更新された場合には新法が適用されることが多くあります。
特に、旧法の自動更新条項に基づいて更新された場合も「合意更新」と見なされるため、新法に準拠した保証契約が必要です。
このため、連帯保証人に極度額の確認をお願いし、賃借人の財産状況を再度確認して署名・捺印を求めることが重要です。
4. 法人が保証人の場合
法人が連帯保証人となる場合は、個人に適用される極度額の規定は適用されません。
そのため、旧法のままでも問題ありませんが、保証契約の更新時には確認を怠らないことが重要です。
まとめ
連帯保証人に関する民法改正の影響は、事業用建物賃貸借契約においても無視できないものです。
特に、個人が保証人となる場合の極度額の設定や、財産状況の開示義務は、契約の有効性に直結するため注意が必要です。
契約更新時には、保証契約の内容を再確認し、新法に準拠した対応を徹底しましょう。