直接取引がなされた場合の仲介報酬
1. 冒頭(導入)
不動産売買において、仲介業者を介さず売主と買主が直接交渉する「直接取引」は、しばしばトラブルを引き起こします。
今回は、仲介業者を排除して直接取引が行われた場合でも仲介手数料を請求できるケースについて、具体的な判例を通じて解説します。
不動産取引における信頼性を確保するために知っておきたい重要なポイントを確認しましょう。
2. ケース概要
本件では、不動産物件を売却するための媒介契約を締結していた売主Aが、仲介業者Zを排除して直接買主Bと契約を結びました。
この場合、売主Aの行為が故意によるものと認定され、民法130条に基づき仲介業者Zが手数料を請求できると裁判所は判断しました。
3. 仲介業者の役割と争点
仲介業者の責任範囲
- 仲介業者は、物件調査や買主候補の紹介、重要事項説明書の作成などを行います。
- 本件では、金融機関の融資紹介が仲介業者の義務に含まれるかどうかが争点の一つとなりました。
直接取引の問題点
- 仲介業者が行った準備や調査を利用しながら、直接取引を行うことは、公平性を欠きます。
4. 法的判断
裁判所は、以下のように判断しました。
- 民法130条の適用
- 売主Aが、仲介業者Zを排除する目的で直接取引を行ったことは「条件成就の妨害」と認定されました。
- これにより、条件が成就したものとみなし、仲介業者の報酬請求が認められました。
- 直接取引条項の有効性
- 契約書内の直接取引条項に基づき、仲介手数料の支払いも妥当とされました。
5. 参考判例と解説
- 東京地判平成27年1月13日
- 仲介業者の尽力で契約が成立した場合、売主が契約を無効にしたとしても手数料が認められた事例。
- 東京地判平成30年11月29日
- 仲介業者を排除した売主・買主に対し、条件成就の妨害を理由に手数料を請求した事例。
6. 実務的なポイント
- 仲介業者の選定
- 信頼できる仲介業者と透明性のある契約を結ぶことが重要です。
- 契約書の確認
- 直接取引条項を事前に確認し、必要に応じて専門家の意見を仰ぎましょう。