投資物件の売買における仲介業者の説明義務
視点
投資物件を購入したが、購入後に建物が建築基準法に違反していることが判明した場合、仲介業者に責任を問うことはできるのでしょうか?
要点
あるケースでは、投資物件の売買において、建築確認および検査済証が駐車場として交付されていた建物の1階部分が、その後、店舗に改造され容積率違反の問題が生じました。
しかし、仲介業者がこの事実を説明しなかったことから、説明義務違反と判断されました。
ケースの詳細
1. 売買の経緯
平成29年12月28日、売主Yと買主Xは、平成3年4月に新築された鉄筋コンクリート造5階建ての共同住宅兼事務所およびその敷地を、売買代金1億9000万円で売買契約を締結しました。Xは宅建業者であり、契約は別の宅建業者Zの仲介で成立しました。Xは、仲介手数料として622万800円をZに支払っています。
2. 問題の発生
購入後、建物1階は駐車場として建築確認を受けていましたが、実際には店舗に改造されていたことが判明しました。この用途変更は容積率超過の原因となり、1階部分の賃貸がキャンセルされました。また、売主Yが提供したレントロール(家賃管理表)は、実際の賃料よりも高い額が記載されており、その内容が確認されないまま仲介業者Zから買主Xに説明されていました。
3. 裁判所の判断
裁判所は、仲介業者Zが買主Xに対して説明義務を果たさなかったと認め、損害賠償請求を認めました。
裁判所の判断のポイント
1. 仲介業者の義務
裁判所は、仲介業者Zには善管注意義務があり、買主Xに対して不動産売買における重要な事項について、正確な情報を説明する義務があるとしました。特に、建築基準法の適合性や賃貸状況は重要な事項であり、これらの情報を買主に正確に伝える責任があるとしています。
2. 容積率違反の問題
建物の1階部分が駐車場として建築確認を受けていたにもかかわらず、店舗に改造されたことについて、仲介業者Zは適切な説明を行わず、建物の図面を買主Xに提供しませんでした。このため、Zには説明義務違反があり、損害賠償責任を負うとされました。
3. 賃貸状況の報告
また、仲介業者Zは、売主Yが提供したレントロールに基づき、賃貸物件の状況について不正確な情報を買主Xに説明しました。賃貸借契約書等の裏付け資料を確認せず、誤った情報をそのまま提供したため、説明義務違反と判断されました。
解説
1. 仲介業者の善管注意義務
仲介業者は、不動産取引の専門家としての地位を有しており、宅建業法に基づいて免許制が導入されています。
このため、取引に関する重要な事項について、正確な情報を収集し、買主に適切に説明する責任があります。
特に、建蔽率や容積率など、建築基準法に関する問題は、物件の適法性に直結するため、重要な説明事項となります。
2. 本件の考察
本件では、仲介業者Zが建築関連法規の適合性と賃貸状況の報告という2つの重要な義務を果たさなかったことが問題とされました。
特に、建築基準法に違反する改造が行われたにもかかわらず、その点を買主に伝えなかったため、裁判所はZの説明義務違反を認定しました。
まとめ
投資物件の売買において、仲介業者には重要な事項について正確な情報を説明する義務があります。
特に、物件の適法性や賃貸状況に関する情報は、取引の成否に直結するため、専門家として慎重に取り扱う必要があります。
適切な説明を怠ることは、仲介業者にとって重大な責任問題を引き起こす可能性があるため、注意が求められます。