賃料増減請求における直近合意時点の捉え方
賃貸契約において、賃料の増減請求が問題となることは少なくありません。
その際、賃料を決定する基準として「直近合意時点」が重要な意味を持ちます。
本記事では、賃料増減請求における直近合意時点の考え方について、裁判例をもとに解説します。
1. 直近合意時点とは?
賃料の増減請求は、借地借家法第32条に基づき、賃貸借契約の当事者が賃料の変更を請求できる権利です。
しかし、どの時点の賃料を基準にするのかが争点となるケースが多くあります。
「直近合意時点」とは、当事者が賃料の増減について合意した最後の時点を指します。
しかし、この「合意」が単なる確認行為であるのか、実質的な協議のうえで決定されたものなのかによって、その有効性が変わってきます。
2. 判例から見る直近合意時点の判断基準
実際の裁判例をもとに、直近合意時点の考え方を見ていきます。
事案の概要
賃貸人Xと賃借人Yは、平成24年にマンションの一室を月額29万8000円で賃貸する契約を締結。
契約後、設備の不具合(風呂場の漏水等)により、数回にわたり賃料の一部が控除された。
平成26年に契約更新を行い、賃料を据え置くことで合意。
平成28年、賃貸人Xが賃料を39万9600円に増額する旨を通知したが、賃借人Yが拒否。
Xは賃料増額の適正性を巡り訴訟を提起。
裁判所の判断
裁判所は、賃料の増減に関する直近合意時点について以下のように判断しました。
平成26年の更新時点では、賃貸人Xが賃料の増額を提案したものの、賃借人Yが拒否したため、実質的な協議が行われたとは言えない。
よって、平成26年の契約更新は、賃料の増減についての「合意」には当たらず、直近合意時点とは認められない。
直近合意時点は、平成24年の契約締結時である。
その後の社会経済的変動を踏まえた結果、適正賃料は31万8000円と判断された。
3. 賃料増減請求のポイント
① 直近合意時点の確定
実質的な協議がなされているかが重要。
単なる賃料の確認や契約更新では、直近合意時点として認められない場合がある。
② 賃料増減の根拠
社会経済的な変動(物価の上昇・不動産価値の変動)が賃料変更の理由として認められるか。
賃貸人と賃借人の双方の交渉履歴がどのようなものだったか。
4. 参考判例
最判平成20年2月29日(判時2003号51頁)
自動改定特約がある場合、相当賃料の判断基準は契約当事者が最後に合意した賃料額に基づくとされた。
東京地判平成28年9月27日
賃料を変更しないこととした更新契約の締結時が直近合意時点と認められた。
東京地判平成28年9月9日
合意賃料が市場価格と乖離している場合、最終更新時以降の変動を考慮して賃料改定が認められる。
5. まとめ
賃料増減請求において、直近合意時点の捉え方は非常に重要です。
単なる契約更新が「直近合意時点」となるわけではなく、実質的な協議の有無がカギとなります。
賃貸契約の更新時には、賃貸人・賃借人ともに賃料変更の可能性を考慮し、交渉の記録を残しておくことが重要です。
今後の賃貸契約において、適正な賃料の判断基準として参考にしてください。
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住所: 大阪府箕面市外院3丁目