地中埋設物の隠れた瑕疵への該当性
視点:売買で購入した土地に地中埋設物が見つかった!宅地としての利用に支障がなくても契約不適合?
土地の売買契約において、引き渡し後に地中から埋設物が発見されるケースは少なくありません。
そのような場合、売主の責任はどこまで問われるのでしょうか?
本記事では、実際の判例をもとに、隠れた瑕疵の該当性について考えていきます。
事案の概要
① 売買契約の締結 平成29年12月、買主Xと売主Yは、土地(本件土地)およびその上の木造2階建て建物(本件建物)を代金2075万円で売買する契約を締結しました。
契約書には、土地が建物を支えるのに適していることは確言するが、植栽や農園には適さない場合があり、土中の自然石などの影響で土の入れ替えが必要な場合、買主負担とする特約が設けられていました。
② 地中埋設物の発見 Xは本件建物をそのまま自宅として使用する予定でしたが、引渡し後、土地調査で駐車スペース裏の表土にコンクリート片を含む廃棄物が露出していることを発見。
また、庭の地中からも多量のコンクリート片が見つかりました。
③ 損害賠償請求の提起 Xは、本件土地には隠れた瑕疵があるとして、瑕疵担保責任または不法行為責任に基づき、Yに対して損害賠償を求めて訴えました。
裁判所の判断
瑕疵担保責任の判断 裁判所は、土地の目的である宅地としての利用に支障がないため、瑕疵担保責任は成立しないとしました。
廃棄物の存在が宅地利用を妨げるとは認められず、特約に基づく自然石の存在についてのみ言及されており、廃棄物は契約不適合には該当しないと判断されました。
不法行為責任の判断 不法行為責任については、売主Yに地中埋設物の存在を知る義務や、告知義務はないと判断されました。
本件土地は元々山林であり、宅地として造成された経緯から、地中の廃棄物を予見する必要がなかったため、Yの責任は認められませんでした。
解説
1. 売主の担保責任 改正前の民法では、売主は隠れた瑕疵について担保責任を負っていましたが、平成29年の民法改正により、契約不適合責任へと変更されました。
今回の判例では、売買契約の目的である「宅地利用」を妨げない限り、埋設物の存在は契約不適合には該当しないとされています。
2. 売主の説明義務・調査義務 売主は契約時に認識している重大な事項について説明義務を負いますが、通常の土地取引において、地中埋設物の調査義務までは負いません。
今回のケースでも、売主が廃棄物の存在を知らず、買主に対してその説明を怠ったとしても、責任は問われませんでした。
3. 本件の検討 本件では、宅地としての利用に支障がないため、廃棄物の存在は瑕疵に該当しませんでした。
今後、売主・買主ともに契約時のリスク説明や調査の範囲について、より明確な合意をすることが重要です。
結論
土地売買における隠れた瑕疵の判断は、契約内容とその目的に大きく依存します。
契約不適合の責任を回避するためには、売主はあらかじめ地中の状況や過去の利用履歴を可能な限り把握し、買主への説明を徹底することが求められます。