新型コロナウイルス感染拡大の賃貸借への影響
1. はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの事業者が営業活動に深刻な影響を受けました。
特に、飲食業をはじめとする対面サービス業では、緊急事態宣言による休業要請や客足の減少により、売上が大幅に落ち込みました。
本記事では、コロナ禍における賃貸借契約の影響について、具体的な事例をもとに解説します。
2. 事例:緊急事態宣言下での賃料支払い義務
(1) 事例の概要
東京都港区にあるビル7階(198.58㎡)を賃借して和食ダイニングを運営していたY社は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で利益が90%減少しました。
これにより、2020年4月以降、ほとんどの賃料を支払えず、2021年3月末までの未払額は2,750万円以上に達しました。
貸主であるX社は賃料不払いを理由に契約解除と物件の明け渡しを求めて訴訟を提起しましたが、Y社は「緊急事態宣言により営業が制限されたため、賃料支払い義務が軽減されるべき」と主張しました。
(2) 裁判所の判断
裁判所は、以下の理由からY社の主張を認めませんでした。
- 民法601条に基づき、賃貸人は賃借人に物件を使用収益させる義務を負うが、本件ではX社が貸室の利用を制限していなかった。
- 賃貸人は、賃借人が利益を得られることまで保証する義務はない。
- 緊急事態宣言が出されたとしても、物件が物理的に使用不能になったわけではないため、賃料の支払い義務は消滅しない。
この判決により、新型コロナの影響で営業が制限された場合でも、賃料支払い義務が軽減されるとは限らないことが明確になりました。
3. 賃料減額の可能性
(1) 賃料の当然減額
民法611条1項では、「賃借物の一部が滅失し、使用・収益ができなくなった場合には賃料を減額できる」と定められています。
しかし、コロナ禍による売上減少は「使用不能」に該当しないため、この条文による賃料減額は認められません。
(2) 事情変更の原則
「事情変更の原則」とは、契約締結後に予見不可能な事態が発生し、そのまま契約を履行することが著しく不合理である場合に、契約の拘束力を緩和する原則です。
しかし、最高裁判例では、この原則が認められることは極めて稀であり、コロナ禍による売上減少が事情変更に該当すると認められる可能性は低いと考えられます。
4. 賃貸人と賃借人の対応策
(1) 賃貸人の対応策
- 家賃の減額交渉: 賃借人の経営状況に応じて、一時的な家賃減額を提案する。
- リスケジュール: 賃料の支払いを分割払いに変更し、賃借人の負担を軽減する。
- テナント支援策: 地方自治体や国の補助金制度を活用し、賃借人が家賃を支払いやすい環境を作る。
(2) 賃借人の対応策
- 賃貸人との交渉: 賃料減額や支払い猶予について、丁寧に相談する。
- 補助金や助成金の活用: 「家賃支援給付金」や地方自治体の補助制度を積極的に利用する。
- 業態転換の検討: テイクアウトやデリバリーの導入により、売上の減少をカバーする。
5. まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの店舗が経済的な打撃を受けましたが、裁判所は「賃料支払い義務は原則として存続する」という判断を下しました。
したがって、賃借人としては、法律に基づく賃料減額を求めるよりも、賃貸人との交渉を通じて柔軟な対応を図ることが重要です。
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株式会社コムハウス:竹村 光平
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面積: 54.9㎡
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