自筆証書遺言の賢い活用法
はじめに
平成30年の相続法改正により、自筆証書遺言の作成がより簡便かつ安全になりました。
この改正により、目録の印字や法務局での遺言保管制度が導入され、高齢者や手書きが難しい方でも安心して遺言を残せるようになっています。
今回は、この新しい制度を活用し、より確実な遺言書を作成するためのポイントを紹介します。
1. 自筆証書遺言の要件緩和
(1) 改正前の相続法における問題点
かつての相続法では、自筆証書遺言は全文、署名、日付をすべて手書きで記載し、押印が必要でした。
さらに目録なども手書きで作成しなければ無効とされており、手書きが難しい高齢者にとって遺言作成は負担が大きいものでした。
たとえば、目録をタイプライターで作成したことで無効とされた判例もあり、厳しい要件が多く存在しました。
(2) 改正後の相続法での新たな対応
現在の相続法では、自筆証書遺言の本文は手書きである必要があるものの、目録部分については印刷したものでも有効となり、一枚ごとに署名と押印をすることで使用できます。
これにより、登記簿や通帳のコピーなども目録として簡単に添付できるようになり、長文を手書きする必要がなくなったことで作成の負担が軽減されました。
2. 法務局での遺言保管制度
従来の自筆証書遺言では、保管についての規定がなく、誤って破棄されたり発見されないリスクがありました。
この問題を解消するために、令和2年7月10日から「遺言書保管法」が施行され、法務局での遺言書の保管が可能になりました。
この制度により、法務局に遺言書を保管してもらうことで、遺言書の紛失や改ざんのリスクを大幅に減らすことができます。
(1) 遺言書保管法の仕組み
遺言者本人が法務局に自筆証書遺言を持参し、本人確認と手数料の支払いを経て遺言を保管してもらうことができます。
法務局に保管された遺言はデータ化されるため、遺言書の内容が偽造されるリスクも軽減されます。また、保管された遺言書については、家庭裁判所での検認手続が不要になるため、相続手続きがスムーズに進むメリットもあります。
(2) 便利で安心な保管制度の活用
法務局で保管された遺言書は、遺言者本人や相続人が必要に応じて確認できるほか、遺言書自体の紛失リスクもありません。
さらに、法務局の保管制度を利用すれば、公正証書遺言に近い信頼性が確保できるため、これからの遺言作成において非常に便利で安心な選択肢といえます。
まとめ
自筆証書遺言の作成において、相続法の改正により手軽さと安全性が向上しました。
新しい保管制度を活用することで、大切な遺言を確実に残すことができます。
不動産の売買や相続、ローンなどの遺産に関する複雑な問題も、しっかりとした遺言書を作成することで、家族や関係者に安心を提供できるでしょう。
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